屋宜 禎央 助教らの研究グループが、鳥の巣から出てきた小蛾類2種の正体を解明しました
外来植物とともに日本へ侵入した可能性
ポイント
- 鳥の巣から採集されていた正体不明の小型の蛾2種を調べ、新種「ミナミコブカザリバ」と、日本初記録の「ギンネムコブカザリバ」であることを明らかにしました。
- 幼虫の探索を行い、ミナミコブカザリバはソウシジュ、ギンネムコブカザリバはギンネムの花を食べることを確認しました。いずれの植物も日本には人為的に持ち込まれた外来植物です。
- 分布や寄主植物との関係、DNA解析の結果から、これらの蛾も寄主植物の移動に伴って日本へ侵入した可能性が示されました。
概要
これまで南西諸島では、モズなどの鳥の巣から、カザリバガ科コブカザリバガ亜科に属する小さな蛾類が複数発見されてきました。しかし、これらの蛾の正確な種名や、幼虫が何を摂食するのか、なぜ鳥の巣から出てくるのかは分かっていませんでした。
九州大学大学院生物資源環境科学府の後藤 聖士郎氏(研究当時)、大学院農学研究院の屋宜 禎央 助教を中心とする研究グループは、琉球列島と小笠原諸島での野外調査、鳥の巣から得られた標本や博物館・大学に保管されている標本の再検討、幼虫の飼育、形態観察、DNAバーコーディングを組み合わせ、これらの蛾の正体と生態を調べました。
その結果、ルリカケスなどの巣から得られていた蛾は、未記載種であることが判明し、ミナミコブカザリバ Gisilia ryukyuensis として新種記載しました。また、モズの巣から得られていた種は熱帯で広く記録されているIthome lassula であり、ギンネムコブカザリバとして日本で初めて記録しました。Ithome 属は本研究が日本初記録となります。
さらに2種の幼虫を探索・飼育したところ、ミナミコブカザリバはマメ科のソウシジュ、ギンネムコブカザリバは同じくマメ科のギンネムの花を食べることが明らかになりました。両植物はいずれも日本在来ではなく、ソウシジュは台湾やフィリピン、ギンネムはメキシコから中央アメリカを原産とする外来植物です。
これらの結果から、これら2種は、いずれも外来植物の移動に伴って日本へ侵入した種であり、鳥の巣から採集されたのは、幼虫が鳥の巣材などを利用するためではなく、鳥が巣を作る際に持ち帰った巣材に付着していたなどの可能性が高いと考えられます。
本研究成果は、国際学術誌「Zootaxa」に 2026年10月14日(木)9時(日本時間)に掲載されました。
研究者からひとこと
今回発見された2種の蛾類は、南西諸島や小笠原諸島では普通に見られますが、体が小さく体色も目立たないため、これまで注目されてきませんでした。しかし、その生活を調べてみると、植物の移動に伴って海外から入って来た可能性や、鳥の巣から見つかる謎を解く手がかりが見えてきました。
一見目立たない小さな生き物でも、じっくり観察すると、思いがけない発見や新たな疑問が隠れています。小さな蛾をきっかけに、身近な自然に新たな視点を持っていただければ嬉しく思います。(後藤 聖士郎)
論文情報
掲載誌:Zootaxa
タイトル:Taxonomic study of flower-feeding moths that emerge from birds' nests, with the description of a new species of Gisilia Kasy, 1968 and first report of Ithome Chambers, 1875 (Lepidoptera, Cosmopterigidae) in Japan
著者名:Kiyoshiro Goto, Yuki Tagawa, Johei Oku, Sadahisa Yagi, Yoshitsugu Nasu & Toshiya Hirowatari
DOI:10.11646/zootaxa.5890.1.3
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