田中 史彦 教授らの研究グループが、自然由来色素を用いた自己修復型スマート鮮度センサー材料を開発しました。

2026.07.01 Environment & Sustainability

食品の鮮度を色で可視化、IoT対応包装として食品ロス削減に期待


ポイント

  • 食品廃棄は世界的な問題であり、鮮度の正確な把握が重要です。従来の方法では専門的な分析装置を必要とする場合が多く、日常的に使用できる簡便な指標の開発が求められていました。
  • 本研究では天然色素アントシアニン(※1)を金属有機構造体(MOF)(※2)に固定化し、安定性を向上させました。さらに自己修復性を持つハイドロゲルと組み合わせることで、耐久性と機能性を兼ね備えたスマート素材を開発しました。
  • 今後はセンサーの小型化や量産化を進め、食品包装への実装を目指します。IoTとの連携により、流通過程におけるリアルタイム品質管理技術への応用が期待されます。

概要

 従来、食品の鮮度を簡単に判断する方法は限られており、品質低下の把握が難しいことが課題となっていました。特に、色の変化を利用したセンサー材料は有望である一方で、天然色素は光や温度に弱く、長期間安定して使用することが困難でした。
 九州大学大学院農学研究院の田中 史彦 教授、田中 良奈 准教授らの研究グループは、食品の鮮度をリアルタイムに可視化できる新しいスマート材料の開発に成功しました。本研究では、植物に含まれる天然色素「アントシアニン」を、多孔質材料である金属有機構造体(MOF)に固定化することで、従来課題であった色素の不安定性を大幅に改善しました。これにより、光や温度の影響を受けにくい安定なセンシング材料を実現しました。さらに、この材料をセルロース由来のハイドロゲルに組み込むことで、自己修復機能を持つスマート材料を開発しました。この材料は損傷しても分子レベルで再結合し、機械的強度と機能を回復する特徴を有しています。
 開発した材料は、食品の腐敗に伴って発生するpH変化やアンモニアに応じて色が連続的に変化します。豚肉の保存試験においては、色変化がpHや揮発性塩基窒素などの鮮度指標と高い相関を示し、食品の劣化状態を直感的に判断できることが確認されました。
 本成果は、食品の品質管理を高度化し、廃棄ロスの削減に寄与する次世代スマート包装技術としての応用が期待されます。
 本研究成果は、2026年5月5日に学術誌「Chemical Engineering Journal」に掲載されました。


参考図

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自己修復型スマートハイドロゲルとpHで変わる食品鮮度リアルタイム可視化センサー (出典:Meng et al., Chemical Engineering Journal (2026), CC BY 4.0)

研究者からひとこと

天然素材とナノ材料を組み合わせることで、安全性と機能性を両立したスマート材料の実現を目指しました。食品ロス削減につながる実用化に向けた研究を今後も進めていきます。(田中史彦)


用語解説

(※1)アントシアニン:植物に含まれる天然色素で、pHにより色が変化する性質を持つ
(※2)金属有機構造体(MOF):微細な孔を持ち、分子を安定に保持できる材料


論文情報

掲載誌:Chemical Engineering Journal
タイトル:Self-Healing Cellulose-based Hydrogel Smart Packaging Embedded with Anthocyanin-Immobilized Metal-Organic Frameworks for Food Preservation and Freshness Monitoring
著者名:Fanze Meng, Xirui Yan, 田中良奈, 田中史彦 ほか
DOI:10.1016/j.cej.2026.176764


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田中 史彦 教授
田中 良奈 准教授