久米教授らの研究グループがエル・ニーニョが熱帯雨林の二酸化炭素吸収を決めていたことを明らかにしました。

2023.10.13 Environment & Sustainability

ポイント

  • 熱帯雨林と大気との間でやり取りされる二酸化炭素と水蒸気は、地球規模の炭素収支と水循環に重大な意味を持ちます。ボルネオ熱帯雨林の二酸化炭素吸収の年々変動は、エル・ニーニョ南方振動(ENSO)に影響されていると考えられてきましたが、そのメカニズムはおろか、本当にそうなのかさえ分かっていませんでした。
  • いくつかのENSOイベント(エル・ニーニョとラ・ニーニャ)を含む10年間のフィールド観測と観測データに基づくシミュレーションモデルにより、森林単位の二酸化炭素吸収速度がラ・ニーニャ時で大きくなりエル・ニーニョ時で小さくなること、そしてそれは、光合成能力(カルビン・ベンソン回路の最大炭酸固定反応速度)がラ・ニーニャ時で大きくなりエル・ニーニョ時で小さくなることが原因であると明らかになりました。
  • 今回の知見は、東南アジアの熱帯雨林が長期的にどのように炭素を蓄積してきたのかを理解し、未来の東南アジア熱帯雨林だけでなく地球規模の炭素収支の予測に役立ちます。

概要

東京大学大学院農学生命科学研究科の熊谷朝臣教授、羽田泰彬特任研究員、高村直也大学院生は、琉球大学の松本一穂准教授、九州大学の久米朋宣教授、大阪公立大学の植山雅仁准教授と共同で、ボルネオ熱帯雨林において、いくつかのエル・ニーニョとラ・ニーニャ(注1、図1)を含む10年間のフィールド観測と観測データに基づくコンピュータシミュレーションを行い、森林単位の二酸化炭素吸収速度がラ・ニーニャ時で大きくなりエル・ニーニョ時で小さくなること、そしてそれは、光合成能力(カルビン・ベンソン回路の最大炭酸固定反応速度(注2、図1))がラ・ニーニャ時で大きくなりエル・ニーニョ時で小さくなることが原因であると突き止めました。

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図1:研究成果のイメージ(エル・ニーニョとラ・ニーニャで、気象条件が変わることがボルネオ熱帯雨林の光合成を変える主要因だと思われてきましたが、Rubiscoの能力が変わることの方が遥かに大きな要因でした。)

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