研究室紹介
生物化学
第3の生物アーキアの可能性
DNA複製、組換え修復、遺伝子発現、RNAプロセシングの分子機構解析と、そこから得られるDNAおよびRNA関連酵素、タンパク質因子を利用した遺伝子工学用酵素、技術開発を行っています。この研究推進のために、当分野では超好熱性アーキア(古細菌)を実験材料として用いています。また最近では、環境中のメタゲノム解析とそれを利用した新規核酸酵素開発研究を展開しています。
研究テーマ
(1)超好熱菌におけるDNA複製・修復・組換えとRNAプロセシングの分子機構
(2)DNAまたはRNA関連タンパク質の新規遺伝子工学技術開発への応用
(3)DNA代謝に関与するタンパク質の分子認識機構の基礎解析
(4)メタゲノム解析手法を用いた海の環境モニタリング
基礎生化学、基礎分子生物学の中で、特にDNA複製、修復、組換え、転写、翻訳などの遺伝情報伝達の仕組みについて、その分子機構を詳細に解析し、その成果を応用して、バイオテクノロジーの有用技術開発を行っています。DNA 複製、修復、組換え、転写、翻訳という遺伝情報の維持と伝達の分子機構の解明は分子生物学の中心課題ですので、これらをテーマにしている研究室は世界中に数えきれなく存在します。その中で生物化学研究室の特徴は、第3の生物といわれるアーキア(日本語では古細菌、始原菌などと訳されます)をモデル生物に用いているところです。アーキアは一見して細菌類と似ていますが、大腸菌や乳酸菌、枯草菌などの真正細菌とは進化系統的に明らかに異なる生物で、我々ヒトを含む真核生物とも違うので第3の生物と呼ばれていて、進化的にとても魅力ある研究対象です。興味深いことに、遺伝情報系に関わるタンパク質はアーキアと真核生物で共通の祖先を有していることがわかっています。したがって、アーキアの研究によって、我々ヒトの細胞の中で起きている遺伝情報伝達と維持の根本原理を理解することができると期待されます。さらにおもしろいのは、生物化学研究室で扱っているのは、100℃の温度で生育する超好熱性アーキアです。極限環境下での生命現象の維持機構を理解するとともに、この生物の産生する安定性の高いタンパク質を用いて、レプリソームのような高次複合体解析を行うことができるので、超好熱性アーキアを用いた分子生物学はとてもエキサイティングな研究領域です。さらに、これらの基礎研究を通して得られる多くのDNA関連酵素、タンパク質因子を利用して、新規遺伝子工学技術、蛋白質工学技術を開発することを目指して研究を続けています。