【トピックス】池上 啓介 准教授が第3回日本医学会連合 Rising Star リトリート ポスター賞を受賞しました。

2024.10.16 トピックス
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日本医学会連合 Rising Star リトリート表彰式 池上 啓介 准教授(前列 右から3人目)

九州大学大学院農学研究院 池上 啓介 准教授が第3回日本医学会連合 Rising Star リトリート ポスター賞を受賞しました。受賞対象となった研究業績は「眼圧の概日リズム分子制御機構―緑内障の時間治療法開発に向けて―」です。


第3回日本医学会連合 Rising Star リトリート ポスター賞

 一般社団法人日本医学会連合は、「医学に関する科学及び技術の研究促進を図り、医学研究者の行動規範を守ることによって、わが国の医学及び医療の水準に寄与すること」を目的とした、日本の医学会を代表する学術的な全国組織の連合体で、現在、基礎部門(15学会)、社会部門(20学会)、臨床内科部門(61学会)、臨床外科部門(46学会)の計142学会からなり、各学会に所属する会員の総数は100万人を超えています。
 Rising Starリトリートは基礎部門が中心となり、持ち回りで5学会(今回は日本生理学会、日本病理学会、日本免疫学会、日本生化学会、日本ウイルス学会)の企画委員が参画し、基礎部会関連学会で奨励賞を受賞するなど活躍する若手中堅会員50名が推薦され、研究発表だけでなく分野を跨いだ交流を通じで基礎医学の活性化を図る集まりです。
 その中でポスター賞はプレゼン能力が優れ優秀な発表を行った研究者に授与されます。


研究の概要
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 人間の感覚の8割は視覚から得ていると言われています。眼圧は、目がカメラのように働いて物を見るのに重要な役割を果たしています。ピントを素早く合わせたり、網膜にきれいに像を結ぶために、目の中の圧力が一定に保たれているのです。しかし、この眼圧が異常になると、視神経が傷つき、緑内障という病気を引き起こします。緑内障は失明の原因として最も多い病気で、一度発症すると、進行を遅らせることしかできず、完治する方法は今のところありません。
 眼圧は、人間のような昼に活動する生き物や、ネズミのような夜に活動する生き物に関係なく、夜に上がるという日内変動を示します。このリズムが崩れたり、昼と夜が逆になったりすると、緑内障のリスクが高くなることがわかっています。ただし、なぜこのような変動が起こるのか、その詳しい仕組みはこれまでわかっていませんでした。
 私たちの研究では、交感神経が分泌する「ノルアドレナリン」と副腎から分泌される「グルココルチコイド」という2つの物質が、時間の情報を目に伝えることを発見しました。また、夜に眼圧を調整する仕組みの一部として、目の中の「マクロファージ」と呼ばれる細胞が関わっていることも突き止めました。
 最近では、脂肪酸などの栄養を目薬で目に補給することで、緑内障などの目の病気を予防したり、治療効果を高めたりする研究を進めています。


期待する効果

 眼圧とは、目の中の圧力のことです。眼圧が異常になると、緑内障という病気が発症しやすくなります。特に、眼圧が高すぎると視神経にダメージを与えるため、とても危険です。さらに、多くの高眼圧の患者さんは、昼間よりも夜に眼圧が高くなりがちです。しかし、昼間に行う検査では夜間の眼圧の上昇を見つけるのが難しいため、緑内障の治療や予防のためには、夜の眼圧をしっかり管理することが大切です。
 今のところ、患者さんと健康な人の間で、昼から夜にかけて眼圧がどのように変化するかはまだよくわかっていません。そのため、緑内障の原因となる眼圧のリズムの異常を見つけるのは難しいです。しかし、この研究によって、眼圧リズムの異常や緑内障を早い段階で発見できるようになることが期待されています。
 現在は、目薬で眼圧を下げることができますが、1日の中で変動する眼圧をコントロールする方法はまだ見つかっていません。この研究が進むことで、眼圧のリズムを整える新しい薬が開発されるかもしれません。そうなれば、緑内障の治療や予防が進み、失明を防ぐことで生活の質(QOL)を大きく向上させることが期待できます。


受賞者からひとこと
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ポスター賞 賞状と盾

 緑内障は加齢とともに増える病気で、日本では40歳以上の人の5%以上がかかっていると言われています。さらに、高齢化が進むにつれて、この数はますます増えると予想されています。そのため、今後は緑内障の予防や治療法を開発することが、非常に重要な課題となっています。これには、専門分野の枠を超えた幅広いアプローチが必要です。「農学で緑内障の研究」と聞くと驚かれるかもしれませんが、異なる分野を組み合わせることで、私たちはヒトの健康、特に目の健康に貢献できると考えています。このような分野をまたぐ研究は「トランスレーショナルリサーチ」と呼ばれ、基礎研究を実際の医療や治療に応用する取り組みです。興味をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。


お問合せ先または詳細

池上 啓介 准教授
代謝・行動制御学 研究室
一般財団法人 日本医学会連合